科学でも立証された「長命の妙薬」 袁 世華 著 文庫サイズ・48頁 まえがき —— 科学でも立証された「長命の妙薬」 漢方(中国伝統医学)では古くから、高麗人参は「人参」の名で、主要な生薬として使用されてきました。
その効果に関しては様々な逸話が残されています。
例えば、古代中国の将軍で洪氏という人がいました。
彼はあるとき負傷して敵の軍隊に捕まり、数日間で気力・体力ともに失われ、死に瀕した状態となりました。
ところが、敵軍の皇太后が高麗人参を土瓶で煎じて飲ませたところ、洪氏はすっかり元気になったといいます。
また、宋の時代の文献には、高麗人参を摂取した人と、摂取しない人が、どちらが長距離を走ることができるか競争した記録があります。
それによると、高麗人参を摂取しなかった人は、3里(中国では1里が500m)ほど走ったところで息も絶え絶えとなったのに対し、高麗人参を摂取した人は5里走っても息が乱れなかったといいます。
さらに、高麗人参は「長命の妙薬」としても古来より珍重されてきました。
すなわち、高麗人参を日常的に摂取していると、長生きする上で役立つというわけです。
これらの話は決して単なる伝説ではなく、近年になって科学的な側面からも立証されています。
詳しくは本文で紹介しますが、高麗人参の摂取は、体力の増強、疲労回復、そして老化抑制に非常に大きな効果を発揮することが明らかにされているのです。
1つは、高麗人参にはたんぱく質の合成を促す作用があることが深く関係しています。
たんぱく質は、私たちの体を構成する主原料で、内臓や血管、骨、筋肉、皮膚などあらゆる組織がたんぱく質を基本に作られています。
ですから、その合成を促す高麗人参は、体の根底から体力を増し、老化を抑える上で役立ちます。
他にも、高麗人参には体の自然治癒力(免疫力・修復力)を高めたり、悪玉の活性酸素を消去したり、血液の流れをよくする働きなどがあることがわかっています。
こうした働きが相乗的に作用し、結果として「長命」につながると考えられます。
漢方では、高麗人参をさまざまな病気の治療にも使用してきました。
もちろん、現在の中国医学でも、高麗人参がよく使われています。
特に吉林省が高麗人参の研究の中心地となっていて、私が教授を務める吉林省の長春中医薬大学の中にも、国の支援金で人参研究院が設置されています。
一方、日本では、薬用植物の大御所として知名度は高いものの、意外に真の素晴らしさが知られていない印象があります。
そこで本冊子では、漢方と西洋医学の両面から、高麗人参の効果について具体的に紹介していきます。
高麗人参のチカラが、一人でも多くの人の「長命」につながることを願っています。
●不整脈の改善にも有効 高麗人参は、心臓の鼓動のリズムが乱れる不整脈に対しても効果を発揮します。
不整脈は、心臓のトラブルに起因して起こるほか、健康な人でも過労や寝不足で体調が悪い時に起こることがあります。
漢方では、どのタイプの不整脈にも高麗人参が処方されます。
最も有名な処方が「生脈散」です。
これは高麗人参と五味子、麦門冬の3つの生薬を組み合わせたもので、その名が示すとおり、脈を生じる薬です。
もう1つ、不整脈には「炙甘草湯」もよく使われます。
これは炙った甘草と高麗人参を主成分とした漢方薬です。
漢方の古典『傷寒論』にも「脈結代(脈の打ち方がゆっくりで時々止まる状態)、心動悸するは、炙甘草湯これを主る」と記載されています。
●アスリートにもおすすめ 疲れやすい人にも、高麗人参は効果的に働きます。
ネズミを2群に分け、一方にだけ高麗人参を与えて水中で泳がせたところ、高麗人参を与えたほうが統計的に有意に長く泳いでいたと報告されています。
高麗人参の働きで、疲労が抑えられた結果と考えられます。
アスリートや登山家なども、日頃から高麗人参を摂取していると、疲労感の緩和のほか、筋力アップや、心筋機能の向上、さらに肺活量も高めてくれます。
また、高麗人参の摂取は気力の向上にもつながります。
古代の漢方では、高麗人参の抗疲労作用は、脾臓の「気」を補う働きによって生み出されると説明されてきました。
漢方では、脾臓は消化と吸収を司る臓器とされているため、脾臓の「気」を補って消化・吸収がよくなると、筋肉に十分な栄養が補充され、疲労しにくくなるというわけです。
目 次 —— 第1章 薬用植物の王様のチカラ ・大地の恵みたっぷりの高麗人参 野生種の主産地は長白山 日本でも江戸時代から栽培 大地の栄養をたっぷり含有 ・漢方では2000年前から珍重 中国の古い薬物書にも記載 日本薬局方にも収載 ・生体のバランスを保つ双方向調整 人参サポニンの効果 第2章 漢方と科学で効果を探る ・漢方では「気」を補う薬として珍重 「虚証」体質の人に最適 加齢とともに「気」は消耗する 自然界に満ちている「気」 不老長寿の妙薬たる所以 ・血液の流れをよくする効果も 「気」の不足は血流も悪くする 血液と血管の両方に作用する ・活性酸素の害を抑える 悪玉酸素は老化と病気の元凶 ・自然治癒力を高める 免疫力の増強を促す 修復力を高める上でも有効 双方向調整作用が特徴 ・中枢神経とホルモンの調整にも 中枢神経とホルモンの仕組み 高麗人参がバランスを調整 第3章 こんな症状に高麗人参を ・心臓の働きを高める 冠動脈が詰まるリスク 高麗人参は心筋を守る 不整脈の改善にも有効 ・糖尿病と合併症の予防・改善 漢方の古典にも記載が 高麗人参は「津液」を補う 双方向調整で体にやさしい 合併症の予防にも最適 ・血圧の安定に役立つ 気虚の低血圧に最適 ・がんの予防と改善に 免疫力の向上に役立つ がんのアポトーシスも促す 化学療法の副作用緩和にも ・不眠症を根底から解消する 中枢神経の調整に働く 日中飲んでも眠くならない ・ストレスに対する抵抗力を高める ストレスに過敏な人はぜひ ホルモンや神経系を調整 ・女性のトラブルに最適 更年期障害をやわらげる 心身のバランスを整える 生理不順、排卵障害などにも ・男性の精力増強にも大きな効果 精子の量・活動性を増す たんぱく質の合成を促す 精気を養い、ホルモンも調整 男性におすすめの漢方薬 ・疲れにくい心身を養う アスリートにもおすすめ ・貧血対策にも効果、記憶力も高める 赤血球と白血球を増やす 「血」「気」をともに補う 2種の人参サポニンの効果 第4章 効果的な利用法Q&A Q・補給源としてはどのようなものがある? Q・高麗人参は産地によって品質に違いはある? Q・食品としての安全性は大丈夫ですか? 【ハート出版ふるさと文庫】若さと健康を守る薬用植物の王様・高麗人参